国立大学の独立行政法人化による国立大学法人への移行に際して,国立大学における学長選考の扱いが大きく変更になっている.
大学の自治は学問の府としての根幹をなすものであり,学長の選考規定の変更は,大学の将来にとって憂うべき事態を招くことは,
良識ある大学人が当初より指摘していた.学長選考の過程は,公教育を預かる大学の運営,学長の姿勢が大きく問われる場面である.
特に,学長選考は,大学の自治が反映されているか,
大学経営陣による私物化が行われているかを問う好例である.
日本の大学のあり方の検討材料として,客観的事実をありのままに正確に記録しておく.
2005年 新潟大学学長選考の経緯
- 学長選考会議メンバー
- 10月11日 第1次意向投票公示
- 11月10日 第1次意向投票結果
鈴木佳秀 108票,長谷川彰 516票,山本正治 304票
- 11月22日 第2次意向投票 公示
- 11月30日 第2次意向投票結果
鈴木佳秀 22票,長谷川彰 360票,山本正治 443票
- 12月6日 学長選考会議結果
- 12月7日 新潟日報,朝日新聞記事
新潟大学総務部長通知
- 12月8日 学長あいさつ
- 12月8日 教育人間科学部教授会決議
「本年11月30日に実施された、第2次意向投票の結果と異なる学長選考会議の結論は認められない」
賛成76票,反対12票,白6票(投票総数 94票)
- 12月12日 学長候補者決定受諾の撤回を求めるアピール
- 12月16日 教育研究評議会 1, 2, 3
- 12月20日 山下 法科大学院研究科長が今回の学長選考の経緯に抗議して,来年1月31日をもって研究科長を辞任する旨を表明し,法科大学院教授会で承認.
- 12月21日 人文社会・教育科学系教授会議で
「長谷川彰氏は、第二次意向投票の結果を受け入れ、学長就任を辞退すべきである」
賛成13票,反対6票,白票0票.
鈴木学系長の抗議の辞任が承認.(鈴木佳秀学系長の学長候補辞退の経緯)
理学部教授会で今回の経緯の説明を求める決議
賛成30票,反対27票,白3票
- 農学部教授会では、説明責任をもとめる動議が出され、継続審議となる.
- 新潟日報記事 新大学長に長谷川氏 逆転再任 選考会議投票で7対3.「密室決定」に非難も,教員有志受諾撤回求め署名活動
- 医歯学系長・山本正治氏も辞任を表明(2006年1月6日新潟日報記事)
- 新潟日報1月13日(金)「学長再任撤回へ教員の35%署名」
- 教育研究評議会報告(平成18年1月13日)
- 学長再任撤回署名 教育人間科学部、農学部につづいて医学科、医歯学総合病院・医科系が過
半数を達成(1月13日(金)現在)
- 読売新聞1月14日(土)「新潟大 学長選挙で大揺れ 3教授,役職辞任」
- 1月20日 学長再任撤回署名417 (3分の1以上) を越える.教育人間科学部,農学部,医学科、医歯学総合病院・医科系,理学部,災害センターなどで過半数に達する.
- 1月24日 選考会議決定受諾の撤回を要請する署名の集計報告
- 1月26日 学長選考決定の無効を求め,新潟地裁へ提訴.(1月27日新潟日報)
- 1月29日 学長選考・社会的責任をどう考える.(1月29日新潟日報社説)
- 2月1日 選考の正当性協調(2月1日新潟日報)
- 2月1日 長谷川彰氏の学長就任に抗議する学内集会
主催 教員有志の会・新潟大学職員組合
集会決議
正義と自由侵された(2月2日新潟日報)
- 2月3日 学長選考会議の議事録などの開示を目的に法人文書開示請求の延期の通知
「独立行政法人の保有する情報の公開に関する法律第10条2項の規程により、30日間決定を延長する」旨の通知
- 2月7日 新潟日報「私の視点」新大は第三者の評価獲得を
- 2月12日 新潟日報「声」学長選 違法性ただすのは義務
- 学長再任撤回署名数474(3月9日)大学院実務法学研究科が過半数
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第1回(3月10日13:30 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
民事部 訴訟番号 平成18年(ワ)第32号・無効確認訴訟(3月10日,新潟日報)
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第2回(4月24日11:00 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第3回(5月22日11:30 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第4回(6月26日11:00 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
裁判長が「特殊性から合議制に移る」と表明し、これまで裁判長のみ1名から3名の裁判官となります.いよいよ実質審理に移るという姿勢を裁判所が見せたようにも感じられます.準備書面では大学側は「教員に訴える利益がないー教員は大學の従業員である」に対し、「大学の特殊性、歴史、判例、教育法学の専門家のコメント」からの反論も展開されました.
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第5回(9月7日16:30 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
裁判長より、これまでの単独審理から、合議体審理に移行するについての裁判手続きの更新の告知.次回口頭弁論において,被告側提出の第3準備書面、原告側提出の第1から第4、および、第5準備書面を中心に、原告適格の問題を審理し、終局判決か、中間判決を明示する旨の方針を示した.
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第6回(10月26日13:10 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
これまでの単独審理から、合議体審理に移行.山崎まさよ(裁判長)、外山勝浩、西村真人・裁判官(合議).
いつも同様に傍聴席がほぼ埋まる40人の見守る中、裁判長は「原告適格性」「訴えの利益」の判断(判決)を次回公判に行う旨を報告.
- 「次期学長候補者決定の無効確認」訴訟 第7回(2007年3月8日13:10 開廷)場所:新潟地方裁判所 第1法廷
訴訟番号 平成18年(ワ)第32号・無効確認訴訟,訴えを却下(民事第2部 山崎まさよ(裁判長)、外山勝浩、西村真人・裁判官(合議)).新潟日報2007/3/9記事
- 2007年3月16日付けで東京高等裁判所に、本件について控訴
重要資料 第11回学長選考会議議事録(2005/12/6)
鈴木候補は,「候補適任であることを認めながら,投票からははずされたこと」が判明しました.そして,彼は選考委員からははずされ選考委員の投票権を奪われていました.
さらに,審議内容についても公表しないことも決定していました.
学長選考関係規則等
その他
- 国立大学法人における学長選考について- 政務官報告 part 142 - 2005年9月29日
文部科学大臣政務官・下村博文(2004年9月就任)学長選考について,滋賀医大などの新潟大学と同様の例を示し,見解を載せている.
- 福島大学の学長選考の例 選考会議が参考とした職員による投票差1票を尊重した例